MLB NEWS
2004年04月21日発行
ファインプレーを支える男
〜グローブデザイナー麻生茂明氏 第2回〜
メジャーリーガーの約3人に1人が使用する『ウイルソン』のグローブ製作に、「グローブデザイナー」として携わる麻生茂明氏を紹介する今回のコラム。第2回は、麻生氏から見たメジャーリーガーの素顔や、日米の選手や各ポジションにおけるグローブへの要求の違いについて触れていきたい。
球界を代表するホームラン打者であり、ウイルソンのグローブで鉄壁の守備を誇るバリー・ボンズ外野手(ジャイアンツ)。スーパースター故に遠い存在と思われがちだが、麻生氏は普段接しているだけに、「日本人が好きだとよく言ってくれるし、ジェントルマンです」とコメント。しかし、名手ならではのこだわりもあり、「気難しい」一面もあるという。そんなボンズとのコミュニケーションで、麻生氏が作り上げたグローブが『A3000』である。大きな手に合わせてポケットが深く、強い飛球が指先に当たっても、指が後ろに反れない独自の技術を採用。本人も気に入っている黒とグレーの2色構成という逸品である。
また、昨年2シーズン連続で2ケタ勝利を挙げた大家友和投手(エクスポズ)もウイルソンのグローブを愛用している。麻生氏の言葉を借りれば、「芯の強いところがあります。負けず嫌いです」という大家は、1つのグローブを大事に扱っているとのこと。しかし更なる飛躍が求められる今年は、ウェブ(網の部分)を改良したモデルでシーズンに臨むことになる。
このほかにも多数のメジャーリーガーと接している麻生氏。各ポジションにおける選手の要求の違いについては、「ピッチャーは、何でも使いたがります。一方の野手、特に内野手は捕球の仕方が実に様々なので大変です」と話した。また、メジャーリーガーと日本球界の選手については、「アメリカ人は、こちらが提供するグローブに気に入ったものがあれば、それに自分を合わせていくところがあります。一方の日本人は要求が非常に細かく、オーダーメイドを好みます」と語っていた。
ボンズの意見を元に新しいグローブの製作を手掛けた麻生氏。その新モデル誕生に一役買ったのが、ボンズ本人の手形だった。最初は冗談半分に名左翼手が提案したのだが、より良いグローブを作るためにとウイルソン社が具体化。麻生氏が作成に立ち会った際には、ボンズの右手が固まった石こうから取り出せなくなり、冷や汗をかく場面もあったとか。それでもスーパースターの難しい要求に悩んだときは、この手形を大いに活用し、難局を打破したという。