MLB NEWS
2005年02月18日発行
プロ野球選手の声を形に
〜第1回 あいまいな感覚をつかみとる〜
豪快なバッティング、打者を手玉に取る頭脳的なピッチング、華麗なるグラブさばき、スピード感溢れる盗塁…。野球というスポーツは、見る者を魅了する要素に満ち溢れている。ましてや最高のアスリートが集うプロの世界では、なおのことと言えるだろう。そんなプロ選手たちの活躍をサポートしているのが、ウィルソンのチームスポーツ事業部に所属する村田裕信氏。普段は縁の下の力持ち的存在である村田氏の活躍を3回に分けて紹介していきます。
「プロ野球選手の用具のサポート」──。村田氏は、自らの仕事を一言でこう表現する。具体的な内容は、まず選手たちと直接会ってバットやグローブなどに対する要望を引き出し、仕入れた情報を的確に開発者へ伝える。そして、それらの意向が反映された、よりカスタマイズされた用具を各選手に届けている。1月の自主トレに始まり、2月のキャンプ、4~10月まで行われる公式戦と絶えず選手たちとコミュニケーションを図りながら情報収集するため、ほとんど休む暇はない。
ウイルソンが契約、提供している選手は12球団に40人。選手1人1人で要望は大きく異なる上、用具に対する意見は「あいまい」で「感覚的」なものが多く、それらを的確に理解し、把握するのは容易なことではない。しかし村田氏は、例えばグローブなら、選手たちが使用しているものに手を入れて感触を確かめ、プレーを見ながらボールのつかみ方をチェックして選手の考えを理解する。また、自らも休日には三塁手としてソフトボールを楽しむのだが、選手の声を体感するために「捕り方を真似する」こともあるのだとか。言葉だけでは把握できなかったことが、ときには自らのプレーを通して分かるときもあり、プロ選手のあいまいな「感覚」を「言葉」に表し、開発に役立てている。
それだけに、村田氏はこの仕事で喜びを感じる瞬間を「選手に喜んでもらうとき。感覚で話されたことを、ものとしてピッタリ合った形で渡せたとき」と語る。中でも、かつてヤクルトで活躍した池山隆寛氏が引退試合に臨んだときのことが忘れられない。村田氏は、池山氏の意向を反映させた、この特別なゲームのためのグローブを用意した。強烈な打球をジャンピングキャッチした池山氏から試合後、「プロ生活の最後に最高のグローブにめぐり会えた。あのグローブだったから、うまく収まった」と声をかけられたことが何よりの思い出となっている。(続く)
