MLB NEWS
2005年03月07日発行
プロ野球選手の声を形に
〜第2回 あいまいな感覚をつかみとる〜
プロ野球選手の活躍を用具の面からサポートするウイルソン・チームスポーツ事業部の村田裕信氏。前回は、選手たちのあいまいな感覚をつかみとる、その仕事ぶりについて触れました。今回は、村田氏が日本人向けに開発した新グローブが完成するまでのプロセスを、日米におけるグローブの使い方の違いなどを交えながら紹介していきます。
バリー・ボンズ外野手(ジャイアンツ)や大家友和投手(ナショナルズ)ら現在メジャーリーガーの3人に1人が使用していることで知られるウイルソンのグローブ。特に「A2000」モデルはプロ、アマ問わず米国の野球選手たちに愛される定番の型となっている。しかし村田氏は以前、日本のプロ選手から、このグローブが今ひとつ手に合わないという指摘を受けた。そこで3年前、日本独自仕様のモデルを立ち上げる決意をし、開発に乗り出した。
村田氏は、この過程で内・外野、投手用のデザインを大きく変更することを決断。日本だけでなくメジャーの春季キャンプも訪問した経験から、日本とメジャーにおける打球の速さや、肩の強さなどの違いに目をつけた。村田氏がいうには、メジャーは打球が鋭く、野手の肩も強いため「内野手のグローブでもポケットが深く、しっかりボールをキャッチすることが大事」。一方、日本人は肩の強さで劣る分、捕球から送球までの動作をスムーズに行う必要がある。このため「ポケットは浅く、しっかり捕球するよりは打球の勢いを殺すイメージのグローブ」が向いているという結論に至った。
また、プロ選手の意見を聞くだけでなく、小売店を訪問し、草野球愛好者の好みなど情報収集に努めた。プロ選手は人一倍グローブにこだわりがあるため、それだけを反映させたものでは、一般のプレーヤーには扱いにくいものとなってしまうからだ。こうしてポケットを浅くしつつ、「プロとアマの双方のニーズを取り入れた」製品ができるよう、工場とのやり取りを何度も繰り返して2003年には型が完成。そして2004年、約2年の月日を経て「A2000J」という新ブランドがついに誕生したのだった。
なお今回は、村田氏から見た日米におけるプロ選手のグローブへのこだわりの違いも紹介していきたい。まず、1人1人が完全別注の日本人に対し、メジャーでは定番モデルの中から気に入ったものを選び、それを使いこなしていくのが通常。しかし、好捕手イバン・ロドリゲス(タイガース)は、メジャー特有の手元で動く速球をしっかりキャッチするためミットに細かい注文をつける。こういったこだわり派のプレーヤーも一部いるという。(続く)
