MLB NEWS

2007年07月24日発行

メジャーリーガーを支える「グローブのジェダイ・マスター」

 去る7月10日にサンフランシスコで行われたメジャーリーグのオールスターゲーム。試合前に行われる先発メンバー発表のセレモニーでは、ファン投票で選ばれたア・リーグ、ナ・リーグそれぞれ8人の野手が、ダッグアウトから敷かれた赤いじゅうたんの上をさっそうと駆け抜けてファンの前に登場した。

 そんな栄光のスターティングメンバーのうち、半数がウイルソンのグローブを愛用しているのを、そして、そのグローブの開発に携わっているのが1人の日本人であることを、ご存知だろうか? その日本人の名は麻生茂明。米国のウイルソンで30年近いキャリアを誇る大ベテランのグローブデザイナーである。

 メジャー屈指の強打者であり、軽快なフィールディングにも定評があるバリー・ボンズ外野手(ジャイアンツ)、強豪タイガースの大黒柱で今回が球宴選出14回目のイバン・ロドリゲス捕手、大都市ニューヨークで今や絶大な人気を誇るデービッド・ライト三塁手(メッツ)…。彼らオールスターのグローブあるいはミットは、選手の動きに対する麻生氏の並外れた観察力と、選手本人とのコミュニケーションを元にして生まれた珠玉の逸品である。その傍ら、麻生氏はその技術と経験を生かし、少年やアマチュア選手に向けた量産品の開発も手掛けている。

 7月20日、その麻生氏を紹介する特集記事が、メジャーリーグの公式ウェブサイト『MLB.com』に掲載された。文中には、ライトやロドリゲスといった一流選手のグローブ開発におけるエピソードが取り上げられている。中でもベテラン投手グレグ・マダックス(パドレス)にまつわるストーリーは、ウイルソンのユーザーなら知っているかもしれないが、この場でも紹介せずにはいられない。

 マダックスといえば、親指と人差し指で輪を作りながらボールを握ることから「サークルチェンジ」と呼ばれるチェンジアップの第一人者。1992~95年には4年連続でサイ・ヤング賞を獲得したが、90年代後半、ボールを握る際に小指をグローブに引っかけてしまうため打者に球種を見破られる欠点を抱えていた。

 この悩みを持ちかけられた麻生氏は、本人からその独特な握り方を直々に教えてもらい、グローブのポケットを改良。その後マダックスは欠点を過去のものとし、41歳となっても現役で活躍し続けている。通算340個もの白星を積み重ねることができたのは、本人の資質もさることながら、麻生氏のサポートもプラスに働いたと言っても過言ではない。

 こういった一流プレーヤーにまつわる話は、もちろんメジャーリーガーたちの間にも広まるもので、クオリティーの高いグローブを提供する麻生氏への信頼は厚いという。それを的確に表現しているのは、世界中で大ヒットした映画『スター・ウォーズ』になぞらえたMLB.comの記事タイトルにほかならないだろう。“Aso the 'Jedi Master' of gloves”(麻生氏はグローブのジェダイ・マスター)──。