2007/9/ 9  --   秋山英宏のテニス・ツアー潜入記

ジョコビッチが愛される理由

今、アーサー・アッシュスタジアムでジョコビッチが準決勝を戦っている。20歳の肉体の躍動がまぶしい。ショットの切れ味。圧倒的な動きの速さ。そして、試合中の豊かな表情。彼は、このトーナメントでアメリカ人の心をすっかりとらえようとしている。

われわれ日本人メディアの間では「はちまきをしたらスシ職人」とか「半纏を着せて金槌を持たせてみたい」「ルパン3世そっくり」とか、さんざんな言われようのジョコビッチだが、大会が進むにつれて、その愛すべきキャラクターが多くの人たちに伝わってきた。極めつけは、準々決勝カルロス・モヤ戦のあとのパフォーマンスだった。

試合後、インタビュアーに促されたジョコビッチは、ベースラインでシャラポワのものまねを始めた。おくれ毛を整える仕草、左手でボールをつく手つきが本人そっくりで、場内は大爆笑。続いてジョコビッチはナダルのまねを始めた。お尻の割れ目に食い込んだパンツを直す仕草にお客さんは(われわれプレスも)腹を抱えた。まあ、ロッカールームで披露するような余興だが、2万人の前でもそれなりに「芸」になっていた。今までこんなことをコート上で見せた選手がいただろうか。まして今は、選手が自分の個性を殺し、サイボーグのように戦うのが当たり前の時代。普段からミスショットに思い切り顔をしかめ、ときどき長い舌を出しておどけた表情を見せるジョコビッチだが、こんな才能まで持っていたとは!

記者会見でパフォーマンスについて聞かれたジョコビッチは、こう答えている。
「もちろんシャラポワやラファ(ナダル)をからかうつもりはないよ。みんなに笑ってもらって、コート上のテニスを楽しむのと同じように、オフコートでも楽しんでもらおうと思ったんだ」

だれでも思うことは同じで、こんな質問をした記者がいた。
--テニス界は今、アガシやマッケンローのような際立ったキャラクターを失っている。その意味で、君のような個性が求められているのかもしれないね。
ジョコビッチは、こう答えた。
「確かにファンはそういうものを求めている。いい選手で、しかも感情表現が豊かで、感情の起伏も激しい個性的な選手をね。みんなが僕のことをそうとらえてくれるのはうれしいね」

マッケンローやアガシの域に達するまでには、まだまだ時間がかかりそうだが、このジョコビッチが愛すべきキャラクターであり、テニス界が待望していた人材であるとは疑いないだろう。

投稿者: フリーライター 秋山 英宏 日時: 2007年09月09日 03:03||コメント: 0    »コメントを送る…

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