2007/9/10 -- 秋山英宏のテニス・ツアー潜入記
最強フェデラーが全米4連覇を達成!
第1セットはジョコビッチにセットポイントが5度あった。第2セットは2本のセットポイントを逃れた。ジョコビッチがそのうちの1本でもものにしていたら、とはだれもが思うだろう。しかし、この「if」はフェデラーにはありえない。大事なところでその選手の本当の力が試される。フェデラーがピンチで示したのは圧倒的な強さであり、ジョコビッチはそこで若さを露呈した。フェデラーの並みはずれた力は「if」が現実となる余地をどんどん狭くしてしまうのだ。
これくらい強いと、強いということ自体がエンタテイメントになる。そんなフェデラーの試合ぶりだった。第1、第2セットは勝負強さで観客を驚かせた。2セット先取で第3セットに入るとぐんとリラックスし、余計な力が抜けた分(まあ、普段から力んで硬くなるということのない人だが)、スーパーショットが続いた。まるで“好プレー集”を見ているようだった。
ところで、そういうショットに対するメディアセンター内の反応が皆さんには想像できるだろうか? 記者という生き物は、ちょっとしたことで驚いたりしない。常に冷静さを装い、やや皮肉な目で試合を眺める。イヤな奴らだと思うかもしれないが、そういうものなのだ。しかし、さすがにフェデラーのショットにはときどき驚きの声が挙がる。ただ、それは「うわっ」とか「ひゃー」とかいった素朴な感嘆の声ではない。笑いが起きるのだ。こんなものを見せられたら笑っちゃうしかない、ということなのか。ホントは驚いているのだが、素朴に感激するのもナンだからとりあえず笑っちゃおう、という感じもある。記者というのはそれくらい“自意識の人”なのだ。まあ、笑ってしまうというのは、素晴らしいものをみた人間の、自然な反応なのかもしれない。とにかく、プレスセンターで試合を見ながら、こんなに笑い声を聞いたことはない。
USオープン4連覇は、1923年のビル・チルデン以来、史上4人目。68年のオープン化以降では初の4連覇達成だった。USオープンでの連勝は27となり、イワン・レンドルが持つオープン化以降の最多記録(85~88年)に並んだ。
ついでに、フェデラーに関する記録をまとめておこう。グランドスラム通算では、これが12度目の優勝。これはロイ・エマーソンと並ぶ史上2位タイ。だれも追いつけないと思われていたピート・サンプラスの「14回」が早くも射程距離に入ってきた。05年ウィンブルドンから続くグランドスラム連続決勝進出の記録は「10大会」に延びた。これは1933年から34年にかけてのジャック・クロフォードの「7大会」の記録を大きく上回り、史上1位だ。
チルデンと言えば、テニス史上の“偉人”の一人。試合を中継したCBS放送は放送の合間にチルデンの映像を挟み、フェデラーの大記録達成を盛り上げた。フェデラーは、弱冠26歳にして早くもテニス界の伝説となりつつある。
投稿者: フリーライター 秋山 英宏 日時: 2007年09月10日 10:13|パーマリンク|コメント: 0 »コメントを送る…