2008/7/ 9  --   秋山英宏のテニス・ツアー潜入記

ウィリアムズ姉妹のベストマッチ

【ウィンブルドン2008より】グランドスラム決勝での姉妹の対戦は7度目だった。ウィリアムズ姉妹の顔合わせと聞いて「またか」と思った人は少なくないだろう。だがこれは、グランドスラムでは03年ウィンブルドン以来5年ぶりの決勝対決だった。02年全仏から03年全豪まで、姉妹はグランドスラム決勝の舞台を独占した。姉妹はそれほど圧倒的だった。この頃の印象が強いので、いつも2人がグランドスラムの優勝を争っているイメージがある。だが、5年もの間、姉妹がグランドスラムの優勝トロフィーを懸けて戦う場面はなかったのだ。

姉妹対決が正直、食傷気味と感じられたのは、試合内容に関係している。テニス界きってのトップアスリート同士試合なのだから、ハイレベルの打ち合いは保証されている。面白くならないはずがない。確かにラリーのレベルは高かった。しかし、それは食うか食われるかの闘いではなかった。やはり、やりにくさはあっただろう。特に、妹思いのビーナスは気持ちを高めるのに苦労したに違いない。それが過去6度の決勝対決での戦績1勝5敗に表れている。そして、姉妹で勝ち負けを争う難しさが、見る者に不完全燃焼の思いを抱かせたのだ。

しかし、このウィンブルドンでは、過去6度の対戦では見られなかった両選手の激しい息づかいのようなものが感じられた。闘争心が「やりにくさ」を上回っていた。特にビーナス。相手のセカンドサーブのとき、ビーナスはベースラインの内側で構えた。今の女子テニスでは珍しくないポジショニングだが、セリーナを相手にここで構える選手はなかなかいない。ビーナスはリスクを承知で、相手に重圧をかけようとしたのだろう。それに気圧されたのか、セリーナのセカンドサービスでのポイント獲得率はわずか23%だった。これでは、2セットで計4度のサービスダウンは致し方ない。

ポジショニングだけではない。ビーナスの「脚」が素晴らしかった。会見でそのことを指摘する記者には「正直、自分ではもっと速く動けると思うんだけど」ととぼけたが、ここは記者の目の方が正しい。フットワークが効いていた。パワーで押すだけでなく、ディフェンシブな状況からのカウンターショットが素晴らしかった。劣勢のラリーから1球で状況を覆す場面が目立った。だから、ラリーはスリリングだった。これまでの姉妹対決で何度か味わった単調さは影を潜めた。女子の最高峰を決めるにふさわしい、好試合だった。

グランドスラム決勝での姉妹の初対戦は01年のUSオープン。そこから7年の月日が流れている。5年間、グランドスラム決勝での対戦がなかったことにも大きな意味があるだろう。5年間にはいろいろな出来事があった。ジュスティーヌ・エナン、キム・クライステルスの台頭とその引退。マリア・シャラポワをはじめとするロシア勢の台頭。新女王アナ・イバノビッチの裁冠。女子テニス界はめまぐるしく変動している。ウィリアムズ姉妹には、度重なるケガとの闘いがあった。荒波にもまれた末に、ウィリアムズ姉妹はこのウィンブルドンで再び頂上決戦を演じた。これまでの姉妹対決の中で、これはベストマッチだった。2人がこの試合にたどり着くためには、それだけの時間が必要だったのだ。

投稿者: フリーライター 秋山 英宏 日時: 2008年07月09日 18:06||コメント: 0    »コメントを送る…

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