2009/6/ 6 -- 秋山英宏のテニス・ツアー潜入記
【09年全仏】20歳の新鋭デルポトロの「覚醒」
第2シード、ロジャー・フェデラー(スイス)と第5シード、フアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)の準決勝は素晴らしい試合になった。シード順の差はわずか3つだが、両選手の間には大きな格差があった。フェデラーはグランドスラムで連続20回、準決勝以上に勝ち上がっていたが、デルポトロはこれが初めての準決勝だった。また、両選手の過去の対戦成績はフェデラーの5勝0敗。デルポトロはこれまで、フェデラーからセットを奪うことさえできなかった。ところが、その両選手の対戦が今大会屈指の好試合になったのだ。
正直に言うと、デルポトロを、広い守備範囲とカウンターショットの正確さを武器とする、守備的な選手と見ていた。逐一、彼の試合を見ていれば、どこかでその変化に気づいたのかもしれない。しかし、ときどきしか彼の試合を見なければ、どうしても、センセーショナルにツアーに現れた17、18歳頃の、ディフェンシブなイメージで見てしまう。そういう視点でこの準決勝を見たら、彼が突然、目覚めたというか、脱皮したと言うしかない。
デルポトロは攻撃的だった。すべてのショットが深く、フェデラーにフォーシングショットを打たせなかった。それどころか、ベースラインでのラリーを支配し、フェデラーを左右に振り回した。高い打点からフラット気味のボールをたたき込み、フェデラーのスライスが甘くなると、キレのよいボールをサイドライン際にコントロールした。最初の3セットはフェデラーを完全に押していた。
ところが、この劣勢を挽回してしまうのが、フェデラーだ。第4セット、わずかに集中の切れたデルポトロは1-6でセットを落とす。ファイナルセットには集中し直したが、尻上がりに調子を上げたフェデラーは、もう主導権を明け渡してくれなかった。
「試合を分析することなんて無理だよ。なぜなら、今は悲しすぎるから」。記者会見で、デルポトロは悲痛な表情を見せた。「まったく互角の試合で、僕には勝てるチャンスがあった。決勝に残りたかったのに、その決勝をテレビで見なくてはならなくなってしまった。この気持ちはとても言葉では言い表せないよ」
しかし、この日のようなテニスが続けられたら、彼にはどのサーフェスでもチャンスがある。そんな確信が得られた試合だった。
投稿者: フリーライター 秋山 英宏 日時: 2009年06月06日 17:17|パーマリンク|コメント: 0 »コメントを送る…